2016,10,15, Saturday
本日のブログの担当は永井です。毎度のことながら、長いです。タイトルからして長そう…。
さて、公演日程も折り返し。
全出演者によるブログ当番も一回りしたというのに、まだ誰も『どん底』の内容について突っ込んで書いていない模様。
これから御覧になるお客様にネタバレしないようにという配慮、とも取れますが…
実のところ、なんとも説明しづらい戯曲なのですよ。
いわゆるストーリーと呼べるのは、こそ泥ペーペル・恋人ナターシャ・愛人ワシリーサによる三角関係のもつれくらいのもの。
他の場面はひたすら愚痴、説教、ののしり合い、思い出話に、歌に酒…まるで場末の居酒屋の如し。
しかもその三角関係はウヤムヤに決着し、最終幕では僅かに語られるのみ…。結局また皆で酒呑んで歌って終了。。
そもそもこの芝居、主役は一体誰なのか?
最終幕に登場しない先の三人を主役と言い切るのは難しく、
劇途中から出ずっぱり喋りっぱなしで周囲を巻き込む巡礼ルカーも、これまた最終幕には登場せず。
逆に最終幕で劇をまとめるかの如く語りまくるサーチンも、中盤まではサボりまくり…。
うーむ…
これはよく言われる『全員が主役の芝居』…
…とは似て非なる、
『主役はいない芝居』なんじゃないか…と、個人的には考えております。
もしくは『主役は目の前には登場しない』『居ても目には見えない』…。
ならば耳では聞こえるのか?
口論や喧騒の中、登場人物達がやたら口にするのが『神』という言葉。
ペーペル「神ってあるのか?」
ルカー「あると思えば、ある」
アンナ「ああ神様…」
コストィリョフ「神よ赦し給え」
クバシニャー「あたしゃ神様に8年も祈ったよ」
…等々、時に真剣に、時に常套句として、時に冗談の一部として語られる“神”は、ルカーの言葉を借りれば、
「あると思えばある」。
どん底で喘ぐ彼等の生き様を、どこかから見ているであろう、神。
果たして実存するのかしないのかを含めて、神こそがこの作品の主役≒主題なのかもしれません。
…と、なんだか哲学チックな考察になって参りました♪
が、これ以上続けると読者が減りそうなので、この話はこの辺で。。
ちなみに
演出・村田氏も“誰が主役か”という点には重きを置かず。曰く「俳優諸君は、それぞれの人生経験を持ち寄ってくれるのが仕事!」。
…とはいえ、
先日のポストショートークでも「ルカーとサーチンの対立は重要。演出としても際立たせたい」と語っていたとおり、事実上この二人=ルカーとサーチンを中心に舞台は進行します。
「神がどうたら、人間はこうたら」と、作品のテーマとも言える哲学を、全編通して語りまくるのもこの二人。
そして、
楽屋でも、ほぼ真ん中あたりにドッカリと鎮座して幅をきかせているのはこの二人。
ルカー北川さんとサーチン金子さんの、同期二人組。
ただし、幅をきかせているのはスペース的な意味でのみ。
心理的にはむしろ、狭苦しい楽屋の風通しを良くしてくださる有難い先輩です。
北川さんは、いわゆる『気ィ遣いィ』。体格にそぐわぬ軽やかなフットワークと繊細さ。なにかと周りに気を配り、つい先日には自分のお誕生日ケーキを自腹で持参し、皆に振る舞ったりしちゃったり(10/8当欄参照)。
一方金子さんは『男は黙ってマイペース』。手際良く出番に備える間はいたって寡黙。ブログまで寡黙(金子さん担当の9/24当欄は、わずか6行!)…と思いきや、たまに思いつきでボソッと口をつく冗談が、これまた困りモノの可笑しさ。
とかく重い気分に陥りがちな『どん底』の楽屋を支えるにはもってこいの、太くてまぁるい柱とガッチリ頑丈な柱。。
ならば
肝心の、舞台上での二人は……
これは実際に観てお楽しみいただく事にいたしましょう。
参考までに
新劇界の先人・岸田國士氏が『どん底』に寄せて書き遺したという演出ノートには、
「ルカー=最大の悪人、“死神”」
「サーチン=“悪魔”メフィストフェレス的」
…とあります。
かたや『死神』こなた『悪魔』。あな恐ろしや。
今回、村田演出の一つのこだわりとして、前半の幕切れは「ルカーとサーチンの視線がぶつかり合って」のちに暗転します。
『死神vs悪魔』の対立を予感させるシーンです。
立ち位置的には、舞台下手(向かって左)のやや高い所に北川ルカー、
金子サーチンは、それより上手(向かって右)から、やや見上げて対峙する形になるわけですが…
ん?
この二人でこの構図となると…
『死神vs悪魔』というより、
『風神vs雷神』に見えやしませんかね??
あるいは『布袋さまとお不動さん』か。
もしくは『あ・うん』の狛犬か…。
ま、いずれにせよ、
何かしら“神さま”っぽく見えさえすれば、
結果的には、我々の思うツボではあります。。
~~追伸~~
余談ながら(ブログとは余談の固まりですけれど)本日10/15は、ブブノーフ役の伊藤和晃さんのお誕生日。
おあつらえ向きに、劇中に「今日はブブノーフの誕生日でなぁ」というセリフがあり、その場面を抜き打ち稽古をするふりしてサプライズケーキ♪
おいくつになったのか聞きそびれましたが、とりあえず我が座組では最年長。
年功序列の楽屋では、もちろん最奥。
その静かなること…
“仏”の如し。。
さて、公演日程も折り返し。
全出演者によるブログ当番も一回りしたというのに、まだ誰も『どん底』の内容について突っ込んで書いていない模様。
これから御覧になるお客様にネタバレしないようにという配慮、とも取れますが…
実のところ、なんとも説明しづらい戯曲なのですよ。
いわゆるストーリーと呼べるのは、こそ泥ペーペル・恋人ナターシャ・愛人ワシリーサによる三角関係のもつれくらいのもの。
他の場面はひたすら愚痴、説教、ののしり合い、思い出話に、歌に酒…まるで場末の居酒屋の如し。
しかもその三角関係はウヤムヤに決着し、最終幕では僅かに語られるのみ…。結局また皆で酒呑んで歌って終了。。
そもそもこの芝居、主役は一体誰なのか?
最終幕に登場しない先の三人を主役と言い切るのは難しく、
劇途中から出ずっぱり喋りっぱなしで周囲を巻き込む巡礼ルカーも、これまた最終幕には登場せず。
逆に最終幕で劇をまとめるかの如く語りまくるサーチンも、中盤まではサボりまくり…。
うーむ…
これはよく言われる『全員が主役の芝居』…
…とは似て非なる、
『主役はいない芝居』なんじゃないか…と、個人的には考えております。
もしくは『主役は目の前には登場しない』『居ても目には見えない』…。
ならば耳では聞こえるのか?
口論や喧騒の中、登場人物達がやたら口にするのが『神』という言葉。
ペーペル「神ってあるのか?」
ルカー「あると思えば、ある」
アンナ「ああ神様…」
コストィリョフ「神よ赦し給え」
クバシニャー「あたしゃ神様に8年も祈ったよ」
…等々、時に真剣に、時に常套句として、時に冗談の一部として語られる“神”は、ルカーの言葉を借りれば、
「あると思えばある」。
どん底で喘ぐ彼等の生き様を、どこかから見ているであろう、神。
果たして実存するのかしないのかを含めて、神こそがこの作品の主役≒主題なのかもしれません。
…と、なんだか哲学チックな考察になって参りました♪
が、これ以上続けると読者が減りそうなので、この話はこの辺で。。
ちなみに
演出・村田氏も“誰が主役か”という点には重きを置かず。曰く「俳優諸君は、それぞれの人生経験を持ち寄ってくれるのが仕事!」。
…とはいえ、
先日のポストショートークでも「ルカーとサーチンの対立は重要。演出としても際立たせたい」と語っていたとおり、事実上この二人=ルカーとサーチンを中心に舞台は進行します。
「神がどうたら、人間はこうたら」と、作品のテーマとも言える哲学を、全編通して語りまくるのもこの二人。
そして、
楽屋でも、ほぼ真ん中あたりにドッカリと鎮座して幅をきかせているのはこの二人。
ルカー北川さんとサーチン金子さんの、同期二人組。
ただし、幅をきかせているのはスペース的な意味でのみ。
心理的にはむしろ、狭苦しい楽屋の風通しを良くしてくださる有難い先輩です。
北川さんは、いわゆる『気ィ遣いィ』。体格にそぐわぬ軽やかなフットワークと繊細さ。なにかと周りに気を配り、つい先日には自分のお誕生日ケーキを自腹で持参し、皆に振る舞ったりしちゃったり(10/8当欄参照)。
一方金子さんは『男は黙ってマイペース』。手際良く出番に備える間はいたって寡黙。ブログまで寡黙(金子さん担当の9/24当欄は、わずか6行!)…と思いきや、たまに思いつきでボソッと口をつく冗談が、これまた困りモノの可笑しさ。
とかく重い気分に陥りがちな『どん底』の楽屋を支えるにはもってこいの、太くてまぁるい柱とガッチリ頑丈な柱。。
ならば
肝心の、舞台上での二人は……
これは実際に観てお楽しみいただく事にいたしましょう。
参考までに
新劇界の先人・岸田國士氏が『どん底』に寄せて書き遺したという演出ノートには、
「ルカー=最大の悪人、“死神”」
「サーチン=“悪魔”メフィストフェレス的」
…とあります。
かたや『死神』こなた『悪魔』。あな恐ろしや。
今回、村田演出の一つのこだわりとして、前半の幕切れは「ルカーとサーチンの視線がぶつかり合って」のちに暗転します。
『死神vs悪魔』の対立を予感させるシーンです。
立ち位置的には、舞台下手(向かって左)のやや高い所に北川ルカー、
金子サーチンは、それより上手(向かって右)から、やや見上げて対峙する形になるわけですが…
ん?
この二人でこの構図となると…
『死神vs悪魔』というより、
『風神vs雷神』に見えやしませんかね??
あるいは『布袋さまとお不動さん』か。
もしくは『あ・うん』の狛犬か…。
ま、いずれにせよ、
何かしら“神さま”っぽく見えさえすれば、
結果的には、我々の思うツボではあります。。
~~追伸~~
余談ながら(ブログとは余談の固まりですけれど)本日10/15は、ブブノーフ役の伊藤和晃さんのお誕生日。
おあつらえ向きに、劇中に「今日はブブノーフの誕生日でなぁ」というセリフがあり、その場面を抜き打ち稽古をするふりしてサプライズケーキ♪
おいくつになったのか聞きそびれましたが、とりあえず我が座組では最年長。
年功序列の楽屋では、もちろん最奥。
その静かなること…
“仏”の如し。。
| 稽古場日記::どん底 | 23:05 | comments (x) | trackback (x) |
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