「タイム」 宮本充

劇場の楽屋の通路には、ホワイトボードが置かれています。
そこには毎日、その日のスケジュールが細かく書き込まれています。

体操の時刻。開場、開演時刻。終演後の予定。翌日の予定(ホテルのチェックアウト時刻、列車の発車時刻ほか)。その他の注意事項などなど。

関係者は、毎日、このホワイトボードをチェックします。
その中に、B5サイズの紙が、一枚あります。
旅の初日からボードに隅に貼られているもので、関係者はこの紙にも必ず目を通します。

ちょっと神妙な顔で…



舞台の上演時間です。
毎日、スタッフが、ストップウォッチで計り、記録しています。
この上演時間が、実は大事なのです。

我々は、演出家を中心に稽古を重ね、ひとつの舞台を作り上げます。
しかし、旅に出ると、我々は演出家の手を離れ、様々な環境の中で舞台に立たなければなりません。
毎回、劇場が変わり、役者の体調も変化します。
知らぬ間に疲れもたまってきます。

そんな中でも最上の舞台を提供するために、上演時間を、ひとつの目安とするのです。

役者の演技、照明、音響のタイミングなど、全てのアンサンブルがうまく調和した時の上演時間を基準とするのです。
もし、そこから大きくずれたとしたら、どこか良くないところがあると判断し、原因を探り、修正していくのです。


「親の顔が見たい」の理想的な上演時間は、約1時間40分。
この写真では分かりにくいかもしれませんが、上演時間は、毎回、この理想タイムの前後30秒以内で収まっているのです。

子供の頃、ストップウォッチでよく遊びました。
目をつぶり、ストップウォッチを押して、頭の中で1分数え、ちょうど1分でストップウォッチを止められるかを友達と競うのです。
大抵、数秒の誤差がありました。

この「親の顔が見たい」の上演タイムを1分間に換算すると、毎回、0.3秒以内の誤差で収まっていることになります。
13人の役者が、それぞれの役になりきって演じ、その間は、もちろん上演時間のことなど考えていません。
それでも、この誤差。

これって、ちょっと凄いと思いません?

| 地方公演::親の顔が見たい | 22:11 | comments (x) | trackback (x) |

  
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